がん治療への各種取組み がんに関する診療実績(院内がん登録)

膵臓がん

膵臓がんの診断、治療、経過観察への流れがわかります。また、久留米大学病院の膵臓がん診療の実績と特徴を記載しています。

膵臓の部位とはたらき

膵臓は、心窩部とお臍の間で胃の後ろ側にあり、長さ15センチ、厚みが2〜3センチの臓器です。その主な働きは、①外分泌機能: 摂取した炭水化物や脂肪、蛋白質を分解する酵素(消化酵素)を含んだ膵液を腸管内に分泌する機能、②内分泌機能: 血糖値を調節するホルモン(インスリンやグルカゴンなど)を血液中に分泌する機能、といった重要な役割をもっています。

本邦の膵臓がんの動向

膵臓がんの年間死亡数は、2000年は約1万9000人でしたが、2011年には約2万9000人、2014年には3万人を越え、臓器別がん死亡の順位では第4位(男性5位、女性4位: 2014年には第4位)と年々増加傾向しています。高齢男性に多いとされていますが男性は40歳代から、女性は50歳半ばから発生しています。一方、5年相対生存率 (膵臓がんと診断された人の5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人に比べてとのくらい低いかであらわす) が依然として低く、予後不良な消化器がんと言えます。国立がんセンターのがん対策情報センターがん情報サービスホームページによると、福岡県は10万対の都道府県別年齢調整死亡率が高い地域といえます。

膵臓がん進展の特徴

膵臓がんの約90%は、膵管の上皮から発生する膵管がんです。また、がんの周囲の膵管には異形上皮がみられており、これら異形上皮から膵がんが発生すると考えられています。膵臓がんの3/4は膵頭部に発生し、進行すると隣接する胆管へ浸潤し閉塞性黄疸(胆管を閉塞して起こる黄疸)、また胃や十二指腸へ浸潤すると消化管閉塞を来たします。一方、膵体部や特に尾部に発生した場合、症状を伴わずに増大していることが多くみられます。組織像の特徴として、間質(がん細胞間の支持組織)の繊維化を伴うことや、容易にリンパ管や静脈浸潤を来たし、さらには神経浸潤(神経の周囲にがん細胞が進展すること)がみられるため、容易に膵外へ浸潤していくことが知られおり、進行してくるとリンパ節転移や肝転移、腹膜播種を伴います。

膵臓がんの診断(図1)

膵臓がん診療ガイドライン2013年版における診断アルルゴリズムでは、臨床症状、血清膵酵素 (アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1、など) や腫瘍マーカー (CA19-9、CEA、DUPAN2、Span1、など)異常、危険因子 (表1)、腹部エコー異常などをターゲットに膵臓がんを疑う場合には、セカンドステップとしてCT (コンピュータ断層撮影)検査あるいはMRI (磁気共鳴画像) 検査、MRCP (磁気共鳴胆菅膵管撮影) 検査を行うことを推奨しています。
サードステップとしては、EUS (超音波内視鏡:胃カメラの先端に小さな超音波装置が備わっており消化管から膵臓を観察する内視鏡検査)、ERCP (内視鏡的逆行性胆管膵管造影: 内視鏡を使って膵管内に造影剤を注入してレントゲン撮影を行う方法)、あるいはPET (陽電子放射断層撮影)検査が行われています。
以上のような病変部の画像診断を十分に検討したのち、その後の治療方針において病理学的根拠が必要と判断された症例に対しては、EUSやERCPに付随して病変の組織や細胞を採取して病理診断(組織診・細胞診)を行っております。

膵臓がんの早期診断の現状

昨今の画像診断機器の発達にもかかわらず、膵臓がんの多くは切除不能な状態で発見されています。その背景には、有効な血清学的検索などのスクリーニング方法が未だ確立されていない現状や費用対効果の問題があるため、早期診断を困難させています。 最近では、危険因子をターゲットとしてMRI/MRCP (CT)のみならずEUSを行うことで、膵臓がんの早期診断を実践している研究報告が成果を挙げてきています。EUSは、小さな臓器あるいは病変を描出するのに優れており、患者さんにとっては胃カメラ同等の感覚でかつ外来で行うことができます。2007年の膵癌登録事業報告では10mm以下の膵臓がんは全体の0.8%と少数例に留まっていますが、特に10mm以下の膵臓がんの発見にEUSの有用性が示唆されています。EUSは当院でも以前より積極的に導入してきましたが、今後筑後地区にも普及に努めていく予定です。

表1. 膵がんのリスクファクター

家族歴 膵がん、遺伝性膵がん症候群
合併疾患 糖尿病、慢性膵炎、遺伝子膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞、肥満
嗜好 喫煙、大量飲酒

*家族歴、合併疾患、嗜好などの危険因子を複数有する場合には、膵がんの高リスク群として検査を行うことが勧められる。
*膵管内乳頭粘液性腫瘍と膵嚢胞は膵がんの前癌病変として慎重な経過観察が勧められる。

図1. 膵癌診断のアルゴリズム

膵臓がんの病期(ステージ)

膵臓がんの取り扱い規約の病期分類では、がんの広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳa/Ⅳb期に分けられています。0期はがん細胞が上皮内の細胞の中だけに存在しており上皮内がんといわれるものですが、Ⅳa/Ⅳb期では膵臓周囲の大事な血管やリンパ節あるいは他の臓器への転移のある状態です。本邦で行われた2007年の膵癌登録事業報告によると、0期〜Ⅲ期までが全体の約20%しか占めておらず、多くがⅣa/Ⅳb期の状態であったと報告されています。

膵臓がんの治療方針(図2)

膵臓がんの治療は、上述した病期・患者さんの全身状態(合併症、年齢、など)・患者さんの望み、などを総合的に判断して治療法を選択しています。病期別では、0期〜Ⅳa期のうち切除可能と判断された患者さんに対しては手術が行われますが、再発リスクを減らすために手術のみではなく術後に化学療法も併用して行われています。Ⅳa期で切除が困難と判断され、病変が膵臓周囲にとどまっている場合(局所進行切除不能)は、化学放射線療法または化学療法が行われています。いくつかの臨床試験でどちらも同程度の効果と考えられるようになっています。現時点ではまだ検討段階ではありますが、周囲の重要な血管にがんが及んでいるあるいはリンパ節転移のあるⅣa期に対して、手術前に化学療法が行われることも臨床試験として実施されています。
当院では、毎週膵臓がん(他の膵疾患を含む)の患者さんについて、内科医・腫瘍内科医・外科医・放射線科医・病理医によるカンファランスを行い、全科共通のプロトコールに従い治療方針を決定するようにしています。

膵臓がんの外科的治療

術前の画像診断に基づく病期(ステージ)を決めたのち、手術可能と判断されかつ耐術可能な全身状態の場合に手術が行われます。以前は手術だけが膵がんの治療とされていた時期もあり、広範囲なリンパ節郭清や血管合併切除など拡大膵切除術も行なわれてきましたが、なかなか膵がんの生存率を上げることはできませんでした。当然手術で切除することは極めて重要ですが、現在では手術だけに頼るのではなく、術前や術後に抗がん剤治療を併用することで、初めて膵がん治療において胃がんや大腸がんの成績に近づけるような良好な予後を得ることができるようになってきました。また(腫瘍が門脈や動脈を巻き込んでいるような)進行した膵がんに対しても術前に放射線治療と抗がん剤治療を併用することで、従来なら切除不可能と判断された病巣を縮小させて切除可能となった症例もみられるようになりました。
膵臓がんの外科的治療には以下のような術式があり、腫瘍の存在部位によってそれぞれの手術方法が選択されます。

1. 膵頭十二指腸切除術

膵頭部領域に発生したがんが適応となります。膵頭部は十二指腸に接し胆管が走行しているため、膵頭部、胆管そして十二指腸、さらにその周囲のリンパ節を含めて合併切除しなくてはなりません。その後、残った胆管・膵臓(膵管)を小腸につなぎ、さらに胃も小腸につなぐ必要があります(Child変法再建術)。

2. 膵体尾部切除術

膵体部、あるいは膵尾部に発生したがんが適応となります。膵体尾部とその周囲のリンパ節、そして脾臓も切除します。腫瘍が大きい場合には、副腎や結腸も合併切除することもあります。

3. 膵全摘術

がんが膵頭部から膵体部〜膵尾部まで及ぶような、膵全体に広く存在する場合に適応となります。膵臓全部と十二指腸と胆管を切除し、胆管と小腸をつなぎ、さらに胃を小腸とつなぐ必要があります(胆管空腸吻合+胃空腸吻合術)。

このような手術方法と抗がん剤治療や放射線療法を併用するといった、最新の治療方法・方針を積極的に取り入れて膵がん治療の進歩を目指しています。

膵臓がんの化学療法

現在膵臓がんに使用されている薬物には、①ゲムシタビン、②ゲムシタビンとエルロチニブの併用、③S-1 (テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)、④FOLFIRINOX (オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル/5-FU、ロイコボリンカルシウム併用)、⑤ゲムシタビンとナブパクリタキセルの併用、⑥ゲムシタビンとS-1の併用、などが行われています。それぞれ、有効性と安全性に多少の違いがあるため、患者さんの希望、ライフスタイル、全身状態(合併症や年齢など)を十分に検討して、選択することが行われています。
ここ数年で上述したような新たなる薬物が膵臓がんの治療に導入されてきており、以前に比し少しずつ効果がみられてきています。しかし、こうした治療は完治に至ることは極めて少ないことも事実であり、病状が進行していった場合には積極的に緩和医療を導入することも重要です。

参考文献

1) 国立がんセンターがん対策情報センターがん情報サービスホームページ
webサイト: http://ganjoho.jp/public/index.html

2) 「もっと知ってほしい すい臓がん のこと」CancerNet Japan
webサイト: http://www.cancernet.jp/publish

3) 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会編. 科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013年版. 金原出版, 2013.

4) 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会編. 患者さんのための膵がん診療ガイドラインの解説. 金原出版, 2015.

5) 日本膵臓学会編. 膵癌取り扱い規約, 第6版(補訂版). 金原出版, 2013.

6) Egawa S, et al. Japan Pancreatic Cancer Registry; 30th Year Anniversary. Pancreas 2012; 41: 985-992.

7) Hanada K, et al. Diagnostic strategies for early pancreatic cancer. J Gastroenterol 2015; 50: 147-154

院内がん登録情報

2013年に久留米大学病院に初発で受診され、当院で初回の治療を受けた膵臓がんの患者さんは80例です。

久留米大学病院で治療を受けた患者さんの進行度をUICCのTNM悪性腫瘍の分類に従った集計を示しています。ステージⅡまでの症例には手術療法が単独および薬物療法との併用が行われています。ステージⅣ症例は39%を占め、薬物療法が主体となっています。

担当部署と専門医

部門 担当医 外来診療
消化器内科 岡部義信 木曜日午前・午後
石田祐介 月曜日午前
倉岡 圭 
安元真希子
消化器外科
(肝胆膵外科)
奥田康司 水曜日午前・午後
安永昌史 火曜日午前・午後
久下 亨 木曜日午前・午後
石川博人 金曜日午前・午後
酒井久宗 水曜日午前
川原隆一 木曜日午前
がん集学治療センター 牛島知之 火・木曜日午前・午後
深堀 理 月・金曜日午前、月曜日午後
放射線科
(治療センター)
淡河恵津世 木曜日午前・午後
江藤英博 金曜日午前
放射線科 久能由記子
病理部 内藤嘉紀

患者さんご紹介の際には「紹介予約センター」をご利用ください。
予約専用フリーダイヤルTEL:0800-200-4897、FAX:0800-200-9489
紹介予約センター直通TEL:0942-27-5673、FAX:0942-31-7897

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