がん治療への各種取組み がんに関する診療実績(院内がん登録)

腎がん

腎がんの診断、治療、経過観察への流れがわかります。また、久留米大学病院の腎がん診療の実績と特徴を記載しています。

はじめに

腎臓は、ちょうど肋骨の下端の高さで、左右、両方にソラマメのようなかたちをした臓器で、血液をこして尿を生成しています。腎臓の実質に発生する悪性腫瘍には、成人に発生する腎細胞がんと小児に発生するウィルムス腫瘍があります。腎臓には良性の腫瘍が発生することもありますが、腎臓に発生する約90%が悪性腫瘍と言われています。

腎細胞がんの発生頻度は、人口10万人あたり2.5人程度です。男女比は2~3:1で男性に多い傾向があります。以前は、目に見える血尿や側腹部の腫れ、側腹部の痛みなどの局所の症状や、原因のはっきりしない発熱、体重減少などの全身症状を契機として発見されることが多くみられました。しかし最近は、超音波検査やCT検査などが普及したことにより、健康診断や他の病気で検査を受けた際に偶然発見される、症状のない小さな(例えば直径3cm以下の)腎細胞がんが増加しています。がんの中では非常にゆっくりと大きくなるタイプが多いのですが、急速な悪化を示すタイプもみられます。静脈の中に腫瘍が広がる(腫瘍塞栓)傾向がつよく、他の臓器への転移を生じ易いがんです。転移は肺、骨、肝臓、脳、リンパ節に多くみられます。化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療が効きにくいのも特徴の1つで、インターフェロン、インターロイキン2などを用いた免疫治療がよく行なわれています。また、スニチニブ、ソラフェニブといった分子標的薬の効果が確認され、使用できるようになりました。今後も新たな分子標的薬の開発がすすみ治療法が増えることが期待されています。

診断

1. 超音波検査

人間ドックなどの健康診断をはじめ、診察のときに最初におこなわれる検査です。腫瘍の有無の判定には有用ですが、腫瘍の性質の判定(良性か悪性か)が困難な場合もあります。

2. CT検査

造影剤を使用して撮影する事により腫瘍の性状の判定に役立ちます。同時に転移や静脈内に伸びた腫瘍塞栓の有無を診断できます。

3. MRI検査

CT検査同様、腫瘍の性状や静脈内の腫瘍塞栓進展の判定に役立ちます。

4. 血管造影

足のつけ根の動脈から直接カテーテルを挿入して腎臓の血管を造影します。 腫瘍の性状判定の補助的診断に用いますが、近年ではCTやMRIの進歩で、腎動脈を詰める塞栓術以外ではあまりおこなわれなくなっています。

5. 生検

通常では生検はおこないません。画像診断で腎細胞がんが疑われ、もう一つ診断の根拠に乏しいという時にはおこなう場合があります。

6. 骨シンチ

骨転移の有無の判定に用います。

腎細胞がんの病期

Ⅰ期:腎臓内に限局している7cm以下のがん

Ⅱ期:腎臓内に限局している7cmより大きいがん

Ⅲ期:腎臓周囲の組織(脂肪・血管)に拡がる、または1つのリンパ節に転移しているもの

Ⅳ期:腎臓周囲のGerota筋膜を超えたり、2個以上のリンパ節に転移したり、他の臓器に転移したもの

治療

腎細胞がんは放射線、抗がん剤治療が効きにくく、手術療法が基本となります。

転移病変に対しては、切除術や免疫療法を行っていましたが、近年、分子標的薬という新しいタイプの治療薬が発売され、効果が期待されています。

1.手術療法

手術療法は、根治が望める唯一の治療法です。腎細胞がんと診断されたら、通常は原発巣の手術を行います。腎臓は2つあるため、患側の腎臓のすべてを摘出する腎摘除術が標準とされています。しかし、最近では人間ドックなどの検診の普及や画像検査の進歩に伴って、症状のない腫瘍径の小さな腎細胞がんが発見されることが多くなったことや、慢性腎臓病(CKD)の考え方が普及してきたことによって腎機能を温存する目的からも、病変部分のみを切除する腎部分切除術も多くなってきました。手術法についても、開腹手術では社会復帰に時間がかかるとともに、傷の痛みがつらいこともあり、より侵襲の少ない手術として、今日では腹部に小さな穴をあけ、内視鏡を挿入する腹腔鏡下手術が広く行われています。また、再発が発見された場合も、患者さんの全身状態が良好で転移巣が切除できる場合には、転移巣の切除術を行うことが推奨されています。なお、手術でがんをとりきれた場合でも5~10年経ってから転移が見つかることもあるので、術後10年以上の経過観察が必要になります。

手術の種類

1) 腎摘除術 (腹腔鏡下手術、開腹手術)
腎摘除術は標準療法とされている術式で、がんのある腎臓を周囲の脂肪組織とともに一塊として摘出する手術です。Ⅲ期およびⅣ期では、腎臓と腎周囲の脂肪組織に加え、副腎も摘出します。また、がんがリンパ節に転移している場合には、リンパ節を切除することもあります(リンパ節郭清)。
主な適応:全身状態が良好。反対側の腎機能が正常。腫瘍径が大きく、腎部分切除術を行えないなど。

2) 腎部分切除術 (腹腔鏡下手術、開腹手術)
腎部分切除術は、がんとその周囲の腎実質を部分的に切除する手術です。
主な適応:腫瘍径が4cm以下、ある程度外方に突出している腫瘍。正常な機能の腎臓が1つしかない。両側の腎臓にがんがある。反対側の腎機能が低下しているため、全摘出により腎不全になることが予想される。など。

手術のアプローチ

1) 腹腔鏡下手術
腹部に5~10mmの穴を4~5ヵ所あけて、内視鏡や手術器具を挿入し、モニターで確認しながら手術を行います。傷が小さく出血が少ないため、早く退院できるなどのメリットがあります。早期のがんに適用し、治療成績は開腹手術と差がないといわれています。ただし、患者さんによっては適用できない場合もあります。

2) 開腹手術
大きながんやがんが周囲の組織に及んでいたり、リンパ節に転移している場合は、一般的には開腹手術を適用します。腎臓に到達するには腹膜をあけて一度腹腔内に入り、さらに腎臓の前を覆っている後腹膜を切開する必要があります。

2.免疫療法

転移のある進行癌に対して、インターフェロンやインターロイキンといった免疫を高めることにより癌を殺す治療法(免疫療法)がおこなわれます。しかし、免疫療法は肺への転移などにはある程度の効果が期待できますが、効果の乏しい場合も多いのが現状あり、奏効率は10~20%と言われています。副作用としては発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、食思不振、骨髄抑制、間質性肺炎、神経精神症状などがあります。

3.分子標的薬

近年分子標的薬という新しいタイプの薬剤が登場しました。分子標的治療薬は、腫瘍細胞の増殖や血管内皮細胞の増殖にかかわる細胞内シグナル伝達を阻害することによって腫瘍の増殖を抑える薬です。薬剤によって内服薬や点滴薬などがあります。2015年10月時点、本邦では腎細胞がんに対しては6種類の分子標的薬が使用可能です。副作用としては、高血圧、疲労、下痢、皮膚炎、肝機能障害、間質性肺炎などがあります。

4.放射線治療

腎細胞がんでは放射線治療の効果があまりよくないため、腎臓にある腫瘍自体の治療のために放射線照射を行うことは稀です。しかし、骨や脳などに腎細胞がんが転移をした場合など、症状を抑えることや治療目的で照射を行う場合があります。

当院における腎細胞がんに対する手術件数の年次推移

院内がん登録情報

2013年に久留米大学病院に初発で受診され、当院で初回の治療を受けた腎がん・尿管がんの患者さんは90例です。

久留米大学病院で治療を受けた患者さんの進行度をUICCのTNM悪性腫瘍の分類に従った集計を示しています。ステージⅠの症例が半数を占めます。治療は、手術治療が主体ですが、進行症例では薬物療法の併用および単独治療も行われています。

担当部門と専門医

部門 担当医 外来診療
泌尿器科 井川 掌 月・木曜日午前
末金茂高 火・水曜日午前
松尾光哲 水・金曜日午前
西原聖顕 月・木曜日午前
名切 信 火・金曜日午前
陶山俊輔 火・木曜日午前
植田浩介 水曜日午前
築井克聡 月曜日午前
放射線科
(放射線治療)
病理部
緩和ケアセンター 福重哲志 水曜日午前午後、金曜日午後

患者さんご紹介の際には「紹介予約センター」をご利用ください。
予約専用フリーダイヤルTEL:0800-200-4897、FAX:0800-200-9489
紹介予約センター直通TEL:0942-27-5673、FAX:0942-31-7897

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