がん治療への各種取組み がんに関する診療実績(院内がん登録)

骨・軟部肉腫

骨・軟部肉腫の診断、治療、経過観察への流れがわかります。また、久留米大学病院の骨・軟部肉腫診療の実績と特徴を記載しています。

はじめに

悪性骨軟部腫瘍(骨軟部肉腫)は骨、筋肉、神経、脂肪組織などに発生する稀な悪性腫瘍であり希少癌と考えられています。組織の特徴から癌とは言わず肉腫と診断されます。また詳細な組織学的分類により、骨発生では骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などに分類されます。また軟部肉腫の中には平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、悪性神経鞘腫、線維肉腫など多くの診断名が存在します。発生頻度は代表的な疾患である骨肉腫が人口100万人当たり1~2人であり、軟部肉腫は人口10万人当たり2人と考えられています。そのため20年前までは治療方法が確立されておらず、腫瘍を単純に摘出し、結果的に再発や転移を繰り返していました。当時の骨肉腫の5年生存率は10-20%しかありませんでした。しかし近年病気についての研究が進み、切除方法の概念や補助化学療法の開発などで生存率は徐々に改善されてきました。現在骨肉腫の5年生存率は70%程度にまで改善されてきています。この治療成績の向上には治療を専門施設で行うようになったことも要因の一つであり、今後はさらに多施設で協力し合い治療成績の向上に努めていかなければなりません。以下に当院における骨軟部肉腫の診断・治療の現状や特徴、臨床研究・治験についてお示し致します。

診断

1.症状の特徴

骨軟部肉腫は検査で偶然見つかることはまれであり、患者さん自身が症状に気づくことにより病院を受診し診断されることがほとんどです。その症状は骨肉腫では疼痛と腫脹です。若年者に多く発生するため、運動が盛んな子供の下肢の疼痛などは見逃されやすくなります。そのため持続する1か月以上の疼痛は病院の受診が必要です。また腫脹を伴う場合はなおさらです。一方軟部肉腫には多彩な組織像があり数多くの病名が存在します。その大部分の症状は疼痛を伴わない腫瘤です。急速に増大するなら軟部肉腫の可能性が高くなります。また4-5年前から存在する四肢に認めていた腫瘍が徐々に増大し検査してみると肉腫であったということもあります。大きさが5㎝を超える腫瘤は要注意です。病院を受診して下さい。

2.画像検査

骨肉腫の診断においてまず必要なものは単純X-P検査です。骨肉腫に特徴的所見が見つかれば直ちにMRI検査を施行し病気の広がりを確認します。さらには全身への広がりを見るため全身CT検査、骨シンチ検査を行っていきます。最近ではPET検査の選択も可能となってきました。どれも全身への転移を確認できる方法です。治療開始前には必ず全身精査を行います。
一方軟部肉腫ではMRI検査が最重要となります。MRI検査は軟部組織などX-P検査では描出できない画像を得ることができ、内部の信号強度により腫瘍の性質を推察することまでできます。画像センターには骨軟部肉腫を専門に診断する放射線科画像診断医師も在籍しており、画像検査レベルで肉腫を疑うことができます。しかし骨、軟部肉腫とも確定診断は組織診断によります。

3.血液検査

肉腫の診断時にも血液検査は行われますが、乳がん、肝がんなどとは異なり腫瘍マーカーなどはありませんので血液検査で診断を強く疑うことはできません。骨肉腫に限って言えばALPが高値を示すこともありますが特異的ではありません。血液検査は主に治療の副作用チェックや全身状態の把握に使用されます。

4.組織検査

画像検査で肉腫を疑われた場合、なるべく早期に組織検査を行います。検査方法には針生検と切開生検があります。針生検は特殊な針を腫瘍に穿刺し組織を採取する方法で、外来で施行可能であり簡便で早期に施行可能ですが、採取される組織量が少量であるため診断に苦慮することもあります。切開生検は皮膚を切開し、直接腫瘍の表面を確認した後に一部組織を切除採取するので診断率が高いのですが、麻酔をかける必要があるため入院を要し、時間と費用がかかります。腫瘍の性質によりどちらを選択するか決まってくることが多いのですが、患者さんが選択できる範囲であれば事前に説明し選んでいただきます。骨軟部肉腫の診断において最も大きな問題は組織診断が難しい例が多いことです。組織採取後直ちにプレパラートが作成され、病理医により確認されるのですが、診断が難しいことが多々あり、時には良悪性の判断さえ困難を伴うことがあります。このような場合は他施設の病理医と相談するシステムが構築されており、多くの意見より診断が決まるというプロセスを踏むことがあります。この場合は診断までに1か月を要することもあり、それでも診断できないときは再度生検を行うこともあります。当院では病理医と密に連携することで、臨床のデータを参考にしながら確実な診断を得るようにしています。

治療

1.化学療法

1) 術前後化学療法

骨肉腫の治療成績が改善された最大の要因は化学療法の導入です。現在世界中で治療が行われていますが、基本的に術前化学療法施行後手術を行い、その後化学療法を追加施行するのが一般的です。当院ではJapan Clinical Oncology Groupの1施設として全国の専門病院と統一した内容で治療を行っています。今後は日本で統一された治療方法が確立されると期待しています。軟部肉腫も同様に術前後化学療法を施行しています。現在多施設共同研究として骨肉腫と同様に全国統一治療方法を行っています。治療効果の解析はまだ先になりますが、現在までの治療効果においてすぐれた結果が報告されています。使用する薬剤や具体的なスケジュールなどは直接担当医へご質問ください。

2) 切除不能例に対する化学療法

切除不能な腫瘍がある状態での化学療法の有効性は確立されていません。当院では患者さんご本人とよく相談の上治療方針を決定しています。進行を遅らせるために薬剤を使用することが基本となりますので、日常生活が送れなくなるような強い副作用を示す薬剤は選択しておりません。副作用の比較的少ない点滴注射、もしくは内服薬で対応しています。それでも全身状態が悪くなることもありますので、十分全身管理を行いながら治療しています。内容に関しては担当医にご質問ください。

2.手術療法

骨軟部肉腫に対する手術療法は基本的に腫瘍を正常組織で包み込むようにして切除する広範切除を行います。そのため骨では腫瘍を含む骨自体と周囲筋肉まで切除となることが多く、切除後に人工関節や処理骨で再建する必要があります。人工関節は主に股関節、膝関節に使用しており、肩関節は処理骨や遊離腓骨、鎖骨などを利用し再建しています。処理にはパスツール処理を行っており、病巣を取り除いた骨を温熱処理して再利用できるため適合性は良く、骨癒合後は耐用年数も人工関節よりはるかに長いという利点があります。しかし骨癒合までに約10か月程度要するため、切除部位によっては人工関節がすぐれている場合も多く見られます。軟部肉腫では大きな筋肉が欠損することがあり、術後の筋力低下がみられることがあります。そのため当院では術前後の筋力測定を行っており、術後の適切な運動訓練を行えるように準備しています。また皮膚、血管や神経に腫瘍が浸潤している場合は合併切除する必要がありますが、このような場合は形成外科、血管外科と合同で治療に当たり、それぞれの専門技術を駆使して最適な再建、機能回復を目指しています。このように切除による機能障害が予測されるため、当院では切除方法についてもご本人と十分相談の上決定しています。

3.放射線療法

1) 術後放射線治療

腫瘍の切除後に病理検査を行いますが、その際に腫瘍細胞が切除縁ぎりぎりに存在する場合に術後放射線治療を行っています。また神経や血管を腫瘍の周囲から剥離温存した場合にも放射線治療が有効なことがあり当科では積極的に施行しています。一方放射線治療が腫瘍細胞にどの程度有効か、肉腫においては明らかな根拠に乏しいため、当科では術前の放射線治療は行っておらず、術後も十分切除できたと判断された場合は施行していません。また放射線治療に期待し、ぎりぎりで腫瘍を切除することもしておりません。切除縁評価で腫瘍細胞が切除端から1㎝以内に存在しているときに施行しています。

2) 重粒子線治療

骨軟部肉腫において切除困難と考えられる症例に対し、重粒子線治療の適応があれば検討しています。骨軟部肉腫には放射線治療効果が期待できない種類の腫瘍も多く、通常腫瘍が塊として存在する状態で放射線治療を行うことはありません。しかし重粒子線治療は周囲への副作用が軽減されることにより多くの線量を照射することが可能であるため、肉腫にも有効であることが報告されています。しかし現時点では切除可能である腫瘍の場合は、より確実な切除を勧めています。一方、腫瘍が切除困難な部位に発生している場合や、切除により大きな機能障害が生じる場合など重粒子線治療の適応を検討する必要がありますが、費用の問題や再発があることなど十分相談の上適応を決めています。

「がんリハビリテーション」

骨軟部肉腫の手術治療では広範な骨、筋肉欠損が生じ、そのため人工関節や処理骨などで再建しますが、筋力低下をはじめとする機能障害は避けられません。しかし術後早期にリハビリを開始することで、治療を受けた部位の筋力が低下しても歩行能力全般の機能が低下しないように訓練しています。当院ではがんリハビリ専門スタッフが在籍しており、個々の障害の程度に合わせた訓練メニューを行っています。また術後の化学療法がおこなわれている場合は体調に合わせてベッドサイドでのリハビリに切り替えています。小児から若年者に発生することの多い疾患であるため、リハビリテーションを充実させることにより、学校生活、社会生活にスムースに移行できるように注意を払っています。

院内がん登録情報

2013年に久留米大学病院に初発で受診され、当院で初回の治療を受けた骨・軟部肉腫の患者さんは41例です。

久留米大学病院で治療を受けた患者さんの進行度をUICCのTNM悪性腫瘍の分類に従った集計を示しています。治療は手術療法に放射線治療や薬物療法を併用されていますが、早期の症例には手術単独療法が多く施行されています。

担当部署と専門医

部門 担当医 外来診療
整形外科 平岡弘二 火曜日午前、木曜日午前・午後
小児科 大園秀一 木曜日午前・午後
放射線科
(治療センター)
淡河恵津世 木曜日午前・午後
放射線科(画像診断) 長田周治
リハビリテーション部 志波直人 月曜・木曜日午前
形成外科・顎顔面外科 清川兼輔 水曜日午前
古賀憲幸
病理学 秋葉 純

患者さんご紹介の際には「紹介予約センター」をご利用ください。
予約専用フリーダイヤルTEL:0800-200-4897、FAX:0800-200-9489
紹介予約センター直通TEL:0942-27-5673、FAX:0942-31-7897

  • がんに関するご相談 がん相談支援センター TEL:0942-31-7903 受付:平日9:00〜16:30
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