がん治療への各種取組み がんに関する診療実績(院内がん登録)

原発不明がん

原発不明がんの診断から治療、経過観察への流れがわかります。また、久留米大学病院の原発不明がん診療の実績と特徴を記載しています。

はじめに

がんが最初に発生した場所をその病巣を「原発巣」と呼びます。また、原発巣のがん細胞が、リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着してできた病巣を 「転移巣」と呼びます。多くの場合は、がんがどこから発生しているのかが判明している場合が多いので、つまり「原発巣」が特定されている場合が多いので、その「原発巣」によって、肺がん、胃がん、大腸がん、卵巣がんなどのような診断名になります。また、多くの場合は、「原発巣」が特定された後に、「転移巣」を調べて、病期(ステージ)分類を行い、治療方針が決定されます。

しかしながら、一方で、「転移巣」が先に判明する場合があります。そのような場合は、もちろん「原発巣」を調べる検査を行って診断名を確定するのですが、なかにはいくら「原発巣」を調べる検査を行っても「原発巣」を特定できない場合があります。このように、「転移巣」が先に発見され、様々な検査を行っても、「原発巣」を特定できない「がん」を「原発不明がん」と呼びます。従来はこのような病気の概念が確立されていませんでしたので、そのような患者さんは、様々な診療科を右往左往することが多かったのです。しかしながら、近年では「原発不明がん」いう概念が確立され、本邦においてもガイドラインが作成されていますので、速やかに診断することが重要になっています。

一般的には「がん」全体の1-5%程度を占めると考えられており、その後の経過より「原発巣」が判明する場合もありますが、多くは最後まで「原発巣」が不明なままです。「転移巣」が先に判明する病気ですので、一般的には予後は不良ですが、特定のグループにおいては、予後が良好な場合もあります。

診断

診断には「転移巣」の生検(組織を一部採取すること)が必須となります。その上で、「原発巣」を検索する上では、次のような検査が有効とされています(すべてを行う必要があるわけではありません)。

1.血液検査:血算・生化学検査・腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, β-HCG, AFP, NSE, CA125, NCCST439, PSAなど)
2.尿検査(一般検尿、細胞診) 
3.便潜血
4.画像:胸部X線検査、 頚部~骨盤CT検査、骨シンチ、ガリウムシンチ、マンモグラフィー、PET検査もしくはPET-CT検査
5.内視鏡:上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査
6.関連科の診察:頭頚部科、乳腺科、婦人科、泌尿器科など

なかには、十分な原発巣の検索が行われていない「原発検索不十分がん」といわれる場合もありますが、上記のような検査を行っても原発巣が判明するのは20%以下ですのでいたずらに検査を長引かせることは避けなければなりません(具体的には、1ヶ月以上かけて原発巣で検索するべきではありません)。

上記の検査以外では「転移巣」の生検結果(病理学的組織診断)が重要であり、その組織型、免疫染色、遺伝子解析などを行うことで、「原発巣」の同定に繋がることがあります。

治療の基本

原発不明がんの治療は、病理検査による組織像や、はじめに出てきた症状によって、最も可能性の高い原発部位を予想して治療法を決めます。病理検査によるがんの種類には、胃、大腸、乳腺などの腺細胞への分化を示すがん細胞(腺がん)や、咽頭、食道、肛門などの扁平上皮細胞への分化を示すがん(扁平上皮がん)などがあります。
基本的には「進行したがん」であるため、全身治療である内科的治療が中心となりますが、外科的治療や放射線治療などの局所治療が病勢制御や生活の質に大きく寄与する場合があります。
また、原発不明がんのなかには、特定の治療に反応するグループを存在するため、そのグループを見逃さないことが重要です。

外科治療

がんの治癒を目指す 「根治的手術」と症状緩和と生活の質の維持を目指す「緩和的手術」に大別されます。これらは患者さんの病状によって選択されます。例えば、女性で原発不明の腋窩(わきの下)のリンパ節転移(腺がん)の場合は、乳癌に準じた外科的切除を中心とした治療でかなりの治療効果が期待できます。また、腫瘍の増大によって消化管の通過障害をきたし、食事ができなくなった場合は、腫瘍の摘出や人工肛門造設(緩和的手術)で、再び食事ができるようになる場合もあります。このように外科治療の役割は大変大きいのですが、全ての原発不明がんにおいて有効ではありませんので、病状によって外科専門医と相談して治療方針を決定する必要があります。

薬物療法

基本的には治療の中心となりますが、残念ながら原発不明がんに対して確立した標準的な薬物療法はありません。過去に行われた小規模の臨床試験の結果から、白金製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)を含む多剤併用化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル療法など)が、一般的に広く行われているのが現状です。これらの薬物療法の成績も決して満足のいくものではありませんが、原発不明がんのなかには、特定の治療に反応するグループがあります。このようなグループには次のような癌に対する薬物療法が効果的です。

1.腺がんの場合

1) 女性で腋窩リンパ節転移のみを有するもの⇒乳癌に準じた治療を行う
2) 女性で腹水のみを有するもの⇒卵巣癌に準じた治療を行う
3) 男性でPSA上昇を伴う骨転移のみを有するもの⇒前立腺に準じた治療を行う

2.扁平上皮がんの場合

1) 頸部リンパ節転移のみを有するもの⇒頭頸部癌に準じた治療を行う
2) 限局する鼠径リンパ節転移のみを有するもの⇒鼠径リンパ節転移±放射線治療を行う
(未分化がん)
3) 50歳以下の男性で縦隔-後腹膜リンパ節転移を有するもの⇒胚細胞腫瘍に準じた治療を行う
(神経内分泌がん)
4) 小細胞肺癌に準じた治療を行う

放射線治療

がんの治癒を目指す 「根治的放射線治療」と症状緩和を目指す「緩和的放射線治療」に大別されます。これらは患者さんの病状によって選択されます。また、放射線治療は単独で行われる場合と手術や抗癌剤と組み合わせて行われる場合があります。例えば、原発不明の頸部リンパ節転移(扁平上皮がん)の場合、リンパ節転移が比較的小さい場合や少数の場合には放射線治療のみ、または放射線治療と抗がん剤との併用でかなりの治療効果が期待できます。また、骨転移による痛み(がん性疼痛といいます)に対しては、放射線治療でその痛み(症状)がかなり緩和されます。このように放射線治療の役割は大変大きいのですが、全ての原発不明がんにおいて有効ではありませんので、病状によって放射線治療専門医と相談して治療方針を決定する必要があります。

院内がん登録情報と治療成績

2013年の久留米大学病院の院内がん登録された原発不明がんの患者さんは14例でした。様々な治療が行われています。さらに、2007年から2014年までの原発不明がんの患者さんを集計すると144人となります。そのうち、未治療であった患者さんは135人で、当院で外科治療、放射線治療、薬物療法のいずれかを受けられた患者さんは81人でした。内訳は、外科的治療が25人(31%)、放射線治療が49人(60%)、薬物療法が51人(63%)でした。それらの患者さんの1年生存率、2年生存率、3年生存率はそれぞれ、44%、32%、26%であり、5年生存率は20%でした。

担当部署と専門医

部門 担当医 外来診療
がん集学治療センター 三輪啓介 月曜日午前、火曜日午後、水曜日午前・午後
牛島知之 火曜・木曜日午前・午後
深堀 理 月曜日午前・午後、金曜日午前
田中俊光 火曜日午前・午後
血液・腫瘍内科/
がん集学治療センター
長藤宏司 月曜日午前
放射線科
(治療センター)
淡河恵津世 木曜日午前・午後
緩和ケア 福重哲志 水曜日午前・午後、金曜日午後
佐野智美 月曜日午前

患者さんご紹介の際には「紹介予約センター」をご利用ください。
予約専用フリーダイヤルTEL:0800-200-4897、FAX:0800-200-9489
紹介予約センター直通TEL:0942-27-5673、FAX:0942-31-7897

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